こんな本を読みました

公開日:1996年11月10日

■ 北朝鮮 秘密集会の夜

北朝鮮 秘密集会の夜

著 者:李 英和
出版社:文春文庫
定 価:480円
コード:ISBN4-16-725002-0

この本は、1994年4月にクレスト社から単行本として出版されたものに、加筆修正し、新たに一章追加されて文庫版として出版されたものです。
単行本が出版された時に、この本には目を通していたのですが、二年の月日が経過し、その間に筆者の回りで起こったことが追記されていたこともあり、文庫版も読むことにしました。

筆者の李 英和氏は、朝鮮籍の在日朝鮮人でありながら、参院選挙に立候補したり、北朝鮮の実情を世間に知らせ、北朝鮮の苦しんでいる人々を助ける団体で活動したりしているので、著書を読んだことはなくても、李 英和氏のことを知っているという人もいるのではないでしょうか?
この本「北朝鮮 秘密集会の夜」は、在日朝鮮人として北朝鮮留学・第一号として祖国に渡り、そこで体験し、考えたことをまとめたものです。
内容は色々とあり、日本列島に居住している人間には、やりたくても出来ない北朝鮮留学の顛末記や、北朝鮮体験本には、お約束ともいえる「まともな国では考えられないこと」の数々、また、題名にもある秘密集会に参加した体験談などが記述されています。

この中には、北朝鮮経済を確かめるべく、重機工場を見学に行った時のくだりがあります。
しかし、そこで筆者を待っていたものは、使い物にならない不良品を製品として展示してある現実でした。なぜ、使い物にならないものなのか判断出来たのかというと、筆者は工業高校を卒業後、溶接工として働いていた経験があるためで、生産現場を見ただけで、実情を見抜いてしまったためです。

さて、私がこの本の中で、北朝鮮社会の悲惨さや、不条理を感じたのは、筆者が、大同江の河畔を散歩している時に見た若者のところです。
筆者が見たその若者は、その若者の兄が韓国に亡命してしまい、家族連座制が適用され、残った一家もろとも収容所送りになることを悲観して騒いでいたのです。
誰か一人でも南に逃げたら、一家全員が犠牲になるという、ひどいシステムが存在しているのです。

いまだに、北朝鮮の現状を認めずに、「地上の楽園」伝説を信じている人がいますが、この「北朝鮮 秘密集会の夜」のような”身内からの告白”を読むと、事実を隠し通すことは出来ないと感じます。
筆者のテンポよい描写が「北朝鮮留学記」として、読みやすいものになっています。是非、手に取ってみて下さい。

おまけ

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