こんな本を読みました

公開日:1997年7月27日

■ 在日韓国人三世の胸のうち

在日韓国人三世の胸のうち

著 者:李青若
発 行:草思社
定 価:1,680円(本体1,600円)
コード:ISBN4-7942-0745-X

この「在日韓国人三世の胸のうち」は、現代コリアに連載された”李家の戦争”(1994年6月号〜95年8・9合併号)をもとに、筆者自身が加筆/修正し、まとめ直しをしたものです。

一世の父と二世の母を両親に持つ在日韓国人として生まれ育った筆者が、在日韓国人とは何か、ということを自分自身の視線で考えたものがまとめられています。
筆者は、この本の中で、友達に自分が在日韓国人であることを告白する際に「気持ちとしては日本人なのよ。韓国籍の日本人だと思って」と説明を付け加えています。
この本を読むと、在日韓国人差別問題と言われているものには、
「政治的なもの」「文化的なもの」「習慣的なもの」「地域的なもの」「歴史的なもの」
といった色々なレベルのものが、複雑に絡み合っていて、日本人のほうも、在日のほうも、個人個人でそれらの問題に対する立場/距離が異なっているため、解決方法を単純化して考えられなくなっているのですが、一つだけ「それは違うだろう」と言って、正さなければならない(正すことができる)ものがあることが分かります。
それは、筆者が指摘しているエチケットの問題です。
筆者がある日本人と戸籍制度について議論しているときのこと、筆者は、その日本人の意見には賛成しかねるので、その日本人が述べた意見に同意しないでいると、

「あなたは同化しているね」
わたしは気分が悪くなった。
在日の人間なら、自分と同じ意見だとでも思っていたのだろうか。日本人が、自分の抱いているイメージに合わないでいる外国人(と、そのひとは思っている)に対して、「日本人に同化している」と非難するとは、どういうことであろうか。

と自分の意見に合わないから非難するという物の考え方に異議を唱えています。
この「私はXXXXと思っているんだけど、当然、あなたも差別されているから、XXXXって考えているよね?っえ?違うの??あなた、差別されているのよ?信じられない!」という自己中心的な考えかたを相手に押し付ける、勝手に期待して、その期待通りにならないと裏切られたと勘違いするということだけでも止めれば、在日韓国人差別問題といわれている問題のかなりの部分が、案外、簡単に見えてくるのではないでしょうか?

この本の帯には

「日本で生まれ育った人間が、日本人のようであって、なんの不思議があるでしょうか」

と印刷されています。
私が在日韓国人だったら、この筆者と同じように考えただろうなと親近感が湧き、紹介しました。
エッセイとして読んでも面白いし、ある在日韓国人家庭の歴史書として読んでも面白いものになっています。
是非、一読を!!

おまけ

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