こんな本を読みました

公開日:1999年7月17日

■ わが祖国 −禹博士の運命の種−

わが祖国 −禹博士の運命の種−

  
著 者:角田房子   
出版社:新潮文庫
定 価:480円(税抜)
コード:ISBN4-10-130805-5

韓国において「種なしスイカ」の禹博士として有名な、禹長春博士の生涯を丹念な取材を基に掘り起こし、そこを通して、知られざる日韓関係に迫った本です。

禹長春博士は、「閔妃暗殺事件」に関ったため日本に亡命して来た朝鮮の軍人と日本女性の間に、1898年4月に日本で生まれました。
東京帝国大学農学部農学実科(東京高等農林学校の前身、現在は東京農工大学)を卒業後、農林省西ヶ原農事試験場に就職、その後、タキイ種苗の農場長に迎えられ、研究者としての才能を発揮しました。

そのまま、終戦を日本で迎え、1950年3月、混乱の中の韓国に渡り、韓国復興を農業技術を通して支え、韓国ではその名を知らぬ者がいないほどになりました。

さて、私は、この本を読むまで、韓国のために働いた、こんな数奇な運命を辿った人が、(しかも、韓国人であれば、その名を知っている)いようとは、まったく知りませんでした。
自分の不勉強さを恥じ入りました。

この本の作者である角田房子さんの、取材にかけるその圧倒的な時間とエネルギーには、ただただ感服するばかりです。そのおかげで、禹長春博士の業績を知るためには、最低限の農業関連の知識がなければならないのですが、私のような農業には門外漢の人間も、判り易い内容になっています。

しかしまぁ、この本、読めば読むほど、禹長春博士の偉大さが身に染みて来ます。
学術的に優れていただけではなく、人間的な大きさを兼ね備えた人でした。
渡韓後の1959年に61歳で亡くなられてしまったのですが、長生きされていれば、もっともっと出来る事がたくさんあっただろうと思うと残念です。

禹長春博士のことをご存知ないのであれば、必読の一冊です。

おまけ

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