こんな本を読みました

公開日:2000年1月10日

■ 朝鮮近代史研究双書 2 朝鮮民衆と「皇民化」政策

朝鮮民衆と「皇民化」政策

著 者:宮田節子   
発行所:未來社
定 価:2,000円(税抜)
コード:ISBN4-624-42017-9

日本が植民地支配をしていた朝鮮において、徴兵を始めたのはいつからだったのだろうか?
私は、こんな疑問を持っていました。
日本と同じように、一定年齢に達したら、男は全て兵隊に採られていたのだろうか。しかし、三・一独立運動が起こるほどに反日気運が強いところでいったいどのようにして可能であったのだろうか?
いくら、日本語教育を始めたところで、片言しか喋れないのであれば、兵隊としては使い物にならないだろう。
それとも、小学生の時から日本語教育を受けた年代が、青年層になった時期から徴兵制を始めたのだろうか?
考え出したらいくらでも疑問が浮かんで来ます。

しかし、実際には、朝鮮半島出身者で日本軍の兵士として戦った経験を持っている人がいることは動かしようのない事実です。

この本は、「創氏改名」の著者でもあり、また、朝鮮近代史の研究者としても実績をあげている宮田節子氏の日中戦争から太平洋戦争にかけて日本が朝鮮にたいしておこなった皇民化政策に関する論文をまとめたものであり、この疑問に対する答えを見つけることが出来ました。

私がびっくりした(興味をもった)のは、朝鮮軍(朝鮮に駐留していた日本軍のこと)が、満州事変のあった翌年の 1932 年(昭和七年)から朝鮮人を軍事活用すべく注目し、徴兵制の試験段階として志願兵制度を実施することになったのであるが、その肝心の徴兵制実施時期を昭和三十五年を想定していたことです。
つまりそれほどまでに、「朝鮮人が日本人になってはいない」ということを、朝鮮軍側が考えていたということです。
“兵士はいくらでも欲しい、しかし、朝鮮人は信用するにたらない”というジレンマを抱えながら、その後の戦局の変化によって、昭和十八年から徴兵制が実施されるに至った変遷を現存する当時の資料をもとに丁寧に掘り起こした力作とも呼べるものになっています。

地道な研究の成果が詰った一冊です。
植民地時代の朝鮮を知ることは、現在の朝鮮半島理解にとっても重要なことです。
ぜひ、御一読を。

おまけ

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