こんな本を読みました

公開日:2007年11月6日

■ 北朝鮮辞典 切手で読み解く朝鮮民主主義人民共和国

北朝鮮辞典 切手で読み解く朝鮮民主主義人民共和国

著 者:内藤陽介
発 行:竹内書店新社
定 価:2,800円(税別)
コード:ISBN4-8035-0316-8

この本の著者紹介のところに「切手を中心とした郵便資料を用いて、国家と社会、時代や地域のあり方を読み解く研究・著述・創作活動を積極的におこなっている」と記されています。

著者の見解では、切手というのは、その切手を発行する国のイデオロギーが色濃く反映されているものであり、また、その国の経済力をも測ることのできるものだとしています。

確かに、日本でもその昔、オリンピックだ万博だと高度経済成長が華やかなころには、それらを誇示する切手が発行されていました。
また、切手ひとつ印刷して、流通させるにもそれなりのコストがかかることは容易に理解できます。

さて、この本では、1946年以降北朝鮮政府が発行した切手を通して、北朝鮮とはどんな国なのかを事典形式で見せてくれます。
あいうえお順に、項目とそれに関する切手の写真、それにまつわる解説文という形になっています。
たとえば、金日成という項目では、金日成の生い立ちと、金日成関連の切手とその解説が載っています。

ところで、ご存知のかたも多い方思いますが、北朝鮮政府は、国の力を誇示すること、金日成主席の功績を称えること、社会主義を賛美することに力を入れていたわけですので、切手にもそれらが強く反映されています。

こんな小さな切手ですが、時代が変われば評価も変わります。
たとえば、1946年8月15日に解放一周年を記念して北朝鮮郵政が発行した金日成将軍の切手は、その1年前に開かれた「金日成将軍歓迎平壌市民大会」を忠実に再現しようとしたため、太極旗をバックにした背広姿の若い金日成将軍が描かれています。

しかし、その後にも、似た構図の「金日成将軍歓迎平壌市民大会」の切手が発行されたのですが、その際には、バックの太極旗が消されてしまっています。
現存する写真にも、ソ連軍の将校と太極旗を前に演説する金日成将軍が写っているのですが、都合の悪いものは消し去るお得意のやり方で「無かったこと」になってしまっています

時代に翻弄されながらも、しっかりとその時代の生き証人になっている切手をながめるだけでも、その時代にタイムスリップをしたような気分にさせてくれます。
見ておいて損の無い一冊です。

おまけ

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